秋風

秋風に胸を満たして三回忌

 

父が亡くなったとき、「時が薬となって癒やしてくれる」と叔母から言われた。確かにそのことばどおり、時間とともに痛みは薄れていった。母が亡くなってからも同じで、三ヶ月、半年、一年と経つうちに胸を刺すような哀しみは薄れてきたように思う。

ただ正直なところ、癒やされたという感覚はまだない。胸の一点にあった刺すような痛みは薄れたが、その範囲はむしろ広がっているようにも感じられる。

なにかで胸を満たさないと、こころがそこはかとない哀しみに占拠されそうだが、かといっておおよそポジティブな感情はいまの私には湧いてきそうもない。せいぜい秋風ででも胸を満たしておく以外になさそうだ。

 

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秋風

秋風を見てをり眠る母に添ひ

 

認知症になった母を、父と姉と三人で支えながら生活していた。だが、母より先に父が亡くなってしまい、その後に義兄が転勤となり和歌山から離れることになった。

もう母の在宅介護は無理かと思ったが、義兄が単身赴任をしてくれたので、引き続き姉の助けを得ながら母の在宅介護をすることができた。

ただ、せめて義兄が赴任先から帰ってくる土日や祝日は姉も自宅で義兄にくつろいでもらいたいのとのことで、日曜、祝日は私が母と二人で過ごすことになった。

母と二人きりで過ごす休日はどこにも出かけられない。とにかく母の傍で退屈しているしかない。この日は母のベッドの傍で庭木を揺らす風を見ていた。

 

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