竹の秋

竹の秋失語の父に問へる母

 

父のベッドの端にちょこんと母が腰掛けている。「おとちゃん、和子やで」「なんで何にも言わんのよ」「なんか言うてよ」

認知症の母には、父が圧迫骨折で入院したこと、入院で一気に認知症が進みことばも話せなくなってしまったこと、退院してから誤嚥性肺炎になって熱のあることなどは分からない。ただ、ベッドに横たわり、一言も喋らない父がいるだけだ。

竹は養分を地下の筍に送るため、春先に葉が黄ばんだ状態になる。これを「竹の秋」と呼ぶそうだ。また竹の花は100年に一度咲くと言われ、花が咲くと竹林は一斉に枯れてしまうという。人生100年と言われる時代、父は竹よりも早く84歳で枯れてしまった。

 

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