野分

野分めく母より逃ぐる二メートル

 

珍しく母が怒った。機嫌の悪い日はあっても、他人に対して激しい口調になることはほとんどない。認知症になってからもそれは変わらなかった。だが、この日は私が感情的になり、母もよほど腹が立ったのだろう。「もう往ね(帰れ)!」と私に言い放った。こんな時は、触らぬ神に祟りなしとばかり母から逃げておくに限るが、この時の母はまだかろうじて立てたので、うっかり車椅子から立ち上がって転んだら大事だ。(実際、洗濯物を干している時に車椅子ごと倒れたことがあった。)何かあったらすぐに助けにいける場所にいて、母のこころの嵐が過ぎ去るのを待った。

若い頃ならこの倍は距離を取れた。いまは正直この距離でも間に合うかどうか……。

 

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