石鹸玉

石鹸玉透けて記憶を病める母

 

『認知症』という病名に抵抗がある。では、どんな病名がよいか。一時期『記憶を病む』という表現を遣っていた。肺結核のことは、『胸を病む』と表現される。『心を病む』や『脳を病む』では他の精神疾患と紛らわしいので、『記憶を病む』ではどうかと思った。

しかし、最近はこれも違うなと思う。認知症が進んで表れる症状は、記憶力の低下にとどまらない。母には確かにさまざまな認知機能の低下が見られる。その意味では、『認知症』という病名は適切なのかも知れない。

それでも、やはり「母が認知症になった」という表現にはどこか違和感がある。侮蔑的と感じる人もいるかも知れないが、「母がボケた」というほうが、私にはしっくりする。

 

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