姥捨

ふとわれは姥捨をせし人間の生まれ変はりと思ふ夕暮

 

夏目漱石の『夢十夜』に、背中に負ぶった子どもが、ちょうど百年前に自分が殺した人間だと気づき、その瞬間に背中の子どもが石地蔵のように重くなるというおそろしい話がある。

この短編を読んで、仮に前世に私が人間だとしたら、どんな人間だっただろうと考えた。

そして、ふと私は前世、姥捨ての風習のあった村で、母を山に捨ててきた人間かも知れないと思った。ただ、幸いにして前世の母は、私が姥捨てをしたことを許してくれているのかも知れない。こうして母の介護をしながらも穏やかに暮らせているのだから。

それともある日、前世の自分の行為を思い出し、母が石地蔵のように重くなる日が来るのだろうか。

 

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