初秋

初秋や母のいのちの坂いくつ

 

九月を過ぎるとほっとする。五年前の九月、母が徐脈で入院した。そのまま危篤状態となり、一晩意識がなかったが、幸いにも翌朝意識が戻り、二週間程で退院した。翌年の一月末また徐脈で入院。体調が落ち着いてきたと思っていた九月、またもや徐脈となって入院した。その翌年は転倒して骨折し、八月末から入院した。結局三年連続で母は九月を病院で過ごしたことになる。そんなわけで私には、一年のうちで九月が、母にとって最もきつい坂と意識されるようになった。

いのちの坂にも上り下り。母はもう何十年も、坂を下り、しばらく平地を歩いて、また坂を下るということを繰り返してきた。できれば最期はゆるやかな坂を下らせてあげたい。

 

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