老母が雑煮食ふとき姉弟会話止む
注視するとき、自然と口は閉じる。さっきまで姉と話をしていても、母の口に雑煮の餅が入ったとたん、どちらともなく会話が止む。
餅といっても、上新粉や白玉粉で出来た餅菓子ならそれほど腰はないが、雑煮の餅はかなり腰があるので、喉に詰まらさないか心配する。母の雑煮の餅をどのくらいの大きさに切るかがまた悩ましいところで、大きすぎると食べにくいし、小さくするとするっと喉に落ちて詰まらせてしまう危険がある。
おめでたいお正月の食卓に生じるちょっとした緊張感。それは微風にも消えてしまいそうな老母のいのちの灯火が灯り続けているからこそのものだ。「ありがたい」とはまさに「有り難い」なのだということを思う。
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