父逝きて余るおでんの腹立たし
父も私も酒飲みであて食いである。酒があれば料理がすすむし、料理があれば酒がすすむ。そんなわけでその日に作った料理はほとんど残ることはない。それを見越して、おでんなどは5人分ぐらい作る。母が1人分、父と私は2人分というわけだ。それでもうっかりすると、一晩でほとんど食べてしまう。
父が亡くなった冬、おでんを作った。母が1人分、私が2人分で3人分ぐらい作った。だが、私は2人分のおでんを食べられなかった。ちょうど1人分ぐらいのおでんが余った。
それがなんだか無性に腹立たしかった記憶がある。ちょうど1人分余ったおでんに、父がもういないことを意識させられるのが嫌だったのだろう。
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