遠からぬこと思ひつつ毛布掛く
父や母が80歳を過ぎた頃、一緒にいられるのもせいぜいあと7、8年だろうから、共にいられる時間を慈しむように生きていこうと思った。それでも父が84歳で亡くなったとき、はげしく動揺した。あの時、ああしておけば良かったという後悔ばかりが、頭の中を駆けめぐった。認知症の母を、父と姉と私で支えようとしてきた。だが、本当に支えるべきは父だったのではないか……。
母はよく布団や毛布をはねあげる。まあ、暖房を入れっぱなしにしているので配はないけれど、隣で寝ている私の方が気になってしまう。起きて動いたり、喋ったりしているときよりも寝ているときのほうが強く、「あとどれくらい……」を意識する。