るる、らるる、老母の見ゐる小鳥かな
「る」「らる」は受身の文語助動詞である。口語の「れる」「られる」と同様、受身以外にも可能・自発・尊敬の意味も合わせもつ。歩けなくなって、箸やスプーンも自分の手ではうまく持てなくなった老母は、着替えも食事も誰かの手を借りることなく出来ない。
こうして「介護」の日々を綴ると、自分の苦労話をひけらかすような物言いになりがちだが、実際は母のほうがずっとつらいに違いない。いまの母は、生活のすべてを受身で送らねばならないのだから……。
裏庭にやって来る小鳥が母の目にどう映っているのかは分からないが、じっと車椅子に座っているしかない母にとって、それが慰めとなってくれていることを願う。
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