星合の母の寝息の静かなり
七夕近くになると、母の訪問入浴に来てくださるスタッフの方が短冊をくださる。「よかったら願いごとを書いて、飾ってください」と言われるのだが、正直これといって願いはない。いまこうして母の介護をしていて、自分の願いを書く気にはなれない。かと言って、母のことでなにか書こうとすると、これがなかなか難しい。子どもとしては長生きしてほしいが、それが母にとって本当に幸せなことかどうか……。いずれ訪れる死が苦しみのないものであることを願うが、さすがに死にまつわることを短冊には書けない。悩んだ末におざなりなことを書いて飾ることになる。
その夜、母は穏やかに眠っていた。あえて願いと言えば、こんな日常だろうか。
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