一万回

一万回母を傷つけしその口で吐いてしまへり一万一回目のことば

 

本当は一万回どころではない。これまでどれだけ母を傷つけることばを吐いてきただろう。なかには暴言もある。誰かがそれを聞いて通報したら、私は虐待の罪に問われていたかも知れない。絶対にしないと誓って守ってこられたのは、母に手を上げないことだけだ。もう限界と思ったら、大声で泣くことにしている。泣くにせよ怒るにせよ、母に強く当たった後は、心にちくりと棘が刺さる。

それでも、すべての怒りを抑えたくはない。少なくとも「認知症だから仕方ない」という納得の仕方をしたくない。それは何か違う気がするのだ。母を一個の人間として見るなら怒るべきことをしたら怒りたい。たとえ母の心にも自分の心にも棘が刺さろうとも……。

 

さばが好き!

にほんブログ村 介護ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ
にほんブログ村

春の蚊

手もことば伝へたれどもわれの手のことば足らずを春の蚊が刺す

 

介護は、手がいのちだと思う。介護の大半は手を使う行為だ。さらに言えば、介護は手で被介護者の身体に触れる行為である。身体を支える、おむつを替える、清拭をするといった行為は相手の身体に触れることなしには出来ない。だから、口で伝えることばに加えて、手で伝えることばがあると思う。いくらやさしいことばをかけられても、手にやさしさがなければ介護される人は安心して身を任せられまい。

私の母のように、言葉の理解が難しくなってくると、なおさら言葉だけでは気持ちが伝えられない。だから、「手のことば」が重要になってくるが、めったに人を刺すことのない早春の蚊がちくりと私の手を刺した。

 

おトクな買い物でフードロス削減【Kuradashi】

にほんブログ村 介護ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ
にほんブログ村