バナナ

母病みてある日抽斗よりバナナ

 

いま思えば、あれが前触れだった。ある日、食器棚の引出しから食べかけのバナナが出てきた。「こんなとこへバナナ入れるなよ!」と言いはしたものの、元来天然なところのある人だったから、さして気にも留めなかった。むしろ、これが母だと思っていた。

あれから二十数年、母はやわらかに病み続け、おそらく今は認知症の末期にさしかかろうとしている。母の介護に献身した父が亡くなって三年、私の生活の中心は介護となった。

介護生活の喜怒哀楽の「楽」が俳句だ。今では介護の合間の俳句が、しばしば俳句の合間の介護となる始末だ。そんなゆるい私の介護を「俳介護」と名付けて、俳句と文章で綴る。介護同様ゆるいので、更新は折々。

 

※note「喜怒哀”楽”の俳介護+」では短歌・詩・その他俳句を公開中

 

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