菫程な人

菫程な小さき人とはわが母のことなり母が笑めば春なり

 

「菫程な小さき人に生まれたし」という夏目漱石の句の中の「菫程な小さき人」とは、世のしがらみを離れ、菫のようにひっそりと生きる人との解釈があるようだ。

この解釈に拠るなら、認知症になって姉や私のことさえはっきりとは認識出来なくなった母は、まさに「菫程な小さき人」であった。病の痛みやさみしさはあったかも知れないが、世のしがらみはもう一切気にする必要はなくなっていたというか、そんな意識ももう持ってはいなかっただろう。

その母の笑みは私にとっては春そのものだった。母が亡くなってはじめての春。母の笑みのごとくに咲いた菫を愛でる。

 

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