露の夜や亡き人ばかり母呼びて

 

母が眠ってくれているときが自分の時間だった。一人では起き上がることさえ出来ない。楽しみと言えば、甘いものを食べることぐらいしかない。そんな母にせめてさみしい思いをさせまいと出来るだけ傍にいようと考えていたが、結局は自分の時間が欲しくて、眠っている母が目を覚ました時など、もう少し寝ていてくれたらと思ったものだ。

目を覚まして傍に誰もいない母が、自分に近しい人を片っ端から呼ぶことがある。亡き祖父母、亡き夫、亡き姉、亡き妹。生きている私が呼ばれることはほとんどない。

母もさみしかっただろうが、私もさみしかった。だが、いまとなっては私にさみしい思いをさせるのも、そのさみしさを癒やしてくれたのも母で、逆に私は母のさみしさを癒やすことは何一つ出来なかった。

 

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